文化看護学会誌
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原著論文
  • 西村 香織, 松井 弘美, 村田 美代子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 1_2-1_10
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
    背景と目的
    近年,本邦で妊娠・出産・育児を行う外国人女性は増加している。本研究は,社会的ハイリスク妊婦に位置付けられる在日外国人妊産婦の,妊娠期から産後1か月までの主観的体験の径路の類型を明らかにすることを目的とした。
    方  法
    研究方法は複線径路・等至性モデルを用いた質的記述的研究である。在日外国人が増加している地方の一次医療機関で出産した在日外国人12名を対象に,妊娠期,分娩期,産後に関する体験について半構成的面接及び参加観察を行った。その結果を,複線径路・等至性モデルに基づき分析した。
    結  果
    妊娠期から産後1か月までの在日外国人妊産婦の主観的体験の径路の類型として,類型1【これまでの妊娠・出産・育児の経験から日本での妊娠・出産・育児のイメージをもち問題なく過ごす】類型2【妊娠・出産に伴う身体の変化と日本の医療の理解度に応じてやり過ごすか医療者を求めるかを選択する】類型3【妊娠・出産に伴う身体の変化と日本の医療について,言語的・文化的に理解できないまま日本の医療者に頼れずそのままやり過ごす】類型4【妊娠・出産に伴う身体の変化と日本の医療について理解できないため日本の医療者に頼らず自国のコミュニティーに依存する】類型5【自己の信念に基づいて日本の医療のサポートを最低限しか受け入れない】の5類型が見出された。
    考  察
    在日外国人妊産婦への妊娠期から産後1か月までの支援においては,妊婦が所属するコミュニティーや妊婦の信念に基づく視点を持つことの必要性が示唆された。
  • ~地域包括ケアシステムに活かす視点から~
    藤田 智恵, 中村 順子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 1_11-1_18
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
    人口の高齢・過疎化が進む阿仁地域のA地区の地域包括ケアシステム構築に向けた示唆を得るため,A地区に根付いている互助の文化について,住民の暮らしの視点から記述することを目的とした。研究参加者であるA地区の住民11名を対象に,半構造的面接を行った。データ分析は,データを意味内容の類似性に基づき統合,カテゴリー化し,概念の抽象度をあげながら,概念を導出した。
    インタビューデータ分析の結果,地区に根付く互助の文化について,中核カテゴリー1,大カテゴリー4,カテゴリー12,サブカテゴリー36が抽出された。大カテゴリーとして昔の助け合いの様子をあらわす【昔は集落内の結束した助け合いが普通だった】,現在に受け継がれ残っている【時代は移り変わってきたが当たり障りなくつながって協力し合っている】,A地区の土地柄と気質をあらわす【近さゆえに身動きしにくい土地柄や気質である】,住民の願いをあらわす【高齢化と過疎化にさらされ不安もあるがこの土地での暮らしを続けたい】の4つが抽出された。そして,これらの大カテゴリーを代表し,研究の問いの結論付けとなる中核カテゴリーを{つかず離れずつながって気遣い合う}と命名した。
  • ― 生活者としての経験に焦点を当てた1事例 ―
    首藤 真由美, 辻内 琢也
    2021 年 13 巻 1 号 p. 1_19-1_27
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
    目  的
    HIV陽性者を生活者として捉え,長期にわたって治療を継続してきた中で治療や病気に対してどのような意味づけをおこなっているのか,社会や文化との関連性も含めて明らかにする。
    方  法
    HIV陽性の40代女性1名に,長期にわたる治療や病気に関する価値観や行動が,身体的・精神的・社会的な変化と共にどのように関連し,そして彼女がどのように対処していったのかを軸に非構造化インタビューを行い,質的に分析を行った。
    結  果
    HIV治療が確立されていなかった感染当時は,不確実な未来に期待しないことで生と死の落差を小さくし,「低空飛行」で死が訪れる日まで確実に生きようとした。その中でHIV感染を「なるべくしてなった」自分の病いとして意味づけた。彼女が「普通」に生活することで死の不安や恐怖を際立たせず,自分あるいは他者とすごす生活の中に病気を馴染ませた。HIVを幹としてつながる人びとと「補い合う」中で共感し,共感されながら彼女は自分のこれまでの生き方を再確認し,自分がHIV陽性者である以上に一人の生活者としての意味を見出していった。
    考  察
    抗HIV薬を飲み続けることは彼女の可能性を広げ,新たな自己を発見することにつながった。そして,他者をケアすることをとおして,役立つことによって彼女は〈生〉の意味を生きていた。病気や治療の意味づけは病気や治療を受け入れるための手段としてでだけはなく,一人の生活者が生きる上で新たな自分を発見するための要素の一つだったと考えられる。
  • ― 環境要因と夫婦の関係性に着目して ―
    渡邊 章子, 諏訪 さゆり
    2021 年 13 巻 1 号 p. 1_28-1_37
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
    目  的
    自宅,または施設で生活をする,配偶者と死別したアルツハイマー病(以下,AD)高齢者の喪の過程について,環境要因,ならびに夫婦の関係性から影響を探ることである。
    方  法
    自宅ではAD高齢者の家族と専門職を2名1組とし,施設では専門職に半構造化面接を行った。得られたデータは質的内容分析をした。
    結  果
    自宅の対象者は専門職が3名,家族が3名,施設では専門職が3名であった。分析の結果,自宅の方が施設よりも喪の様相が多く認められた。要因として,自宅の方が配偶者を想起する物や場所があること,および周囲の者の関わり方の影響が考えられた。夫婦関係が良好の事例からは【後悔と夢】【周囲の関わりによる慰め】【悲哀と無関心】というテーマが得られた。【周囲の関わりによる慰め】は〔娯楽への参加により死別の悲しみが癒されるが,仏壇に向かうとしんみりとする〕より抽出された。【悲哀と無関心】は,アパシーがある事例の,〔亡くなった瞬間は配偶者の名前を呼んで泣き崩れるが,遺体が見えなくなった瞬間に何事もなかったようにおやつを食べる〕より抽出された。一方,不良の事例からは【不快時の大声と異食】【追悼】というテーマが得られた。【追悼】は〔家族やスタッフとの会話から俳句を詠む〕から見いだされた。
    AD高齢者の喪の過程においては,仏壇や墓参りなどの活用といった日本文化的なスピリチュアルケア,および本人がリラックスし癒されるようなケアの創出が重要であることが示唆された。
  • 原 尚子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 1_38-1_47
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
    目  的
    日本の医療現場の国際化が加速している中,外国人医療の知識と対応能力を持つ看護師が育つことは重要である。この研究の目的は,看護師養成機関においてどのような言語教育と国際化にむけての教育がなされているかを,大学に比べて教育内容の実態把握が難しい看護専門学校に焦点をあてて実態調査を行い,現状と学校差の有無,課題を明らかにすることである。
    方  法
    全国の全日制3年課程の看護専門学校のうち閉校予定などを除く487校を調査対象とし,郵送による無記名式質問紙調査を行った。主な評価項目は,英語教育と国際化教育(言語以外)の時間数や内容,方向性,求める講師,どのような国際化対応人材を育成したいか,課題点,である。
    結  果
    回収は170通(回収率34.9%)であり,3年間の英語時間数は学校差が大きく,平均は52.35時間であった。国際化教育は74%の学校が導入しているが,53%の学校が内容の充実を求め,海外での医療か外国人医療を経験した医療者を講師としたい回答が多かった。育成したい人材として国内で外国人患者対応ができる看護師が最も多く,課題は時間と人材の不足であった。
    考  察
    国内事情を受け,海外で活躍する人材より国内で多文化対応ができる看護師の育成を目指す回答が4.7倍多く,国際看護の中心が海外から国内に移っていることが示唆された。今後医療通訳者など国内の多文化医療の専門家を講師として活用するなど,養成においても積極的に多職種連携を検討する価値があると考えられる。
報  告
  • 坂東 瑠美, 大湾 明美, 田場 由紀, 砂川 ゆかり
    2021 年 13 巻 1 号 p. 1_48-1_56
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
    目  的
    A島の介護保険サービス事業所(以下「B事業所」とする)の実践から,看取り文化を継承するケアに息づく生活文化を見出すことで,死を生活の場に取り戻し地域での看取りを推進する可能性について考察することを目的とした。
    方  法
    研究参加者は,事業所で島の死生観を共有している地元出身の介護職の研究参加者に対し,フォーカス・グループ・インタビューを実施した。インタビューのテーマは「在宅看取りケアとして実践していることは何か,その理由は何か」であった。分析は,島の介護職が実践している看取りケアについて,生活文化の観点からキーセンテンスを作成し,その特徴を命名した。倫理的配慮は,参加は自由意思によること,個人情報は保護されること等を説明し同意を得た。
    結  果
    島の看取り文化を継承するケアの実践内容は,5つ導かれた。そのケアごとに見いだされた生活文化は以下のとおりであった。1.最後まで口から食べさせるケア:【生き抜いてきたことへの敬意】,【最期にある希望】などであった。2.生前に会いたい人とつなぐケア:【旅立つための思いを成就】,【命のつなぎ】などであった。3.思い出とともに安心して逝くケア:【つながりの確かめ】,【楽しく橋渡し】などであった。4.遺体を寂しがらせないケア:【島の死生観への責任】,【慣習と犠牲】などであった。5.別れの儀式のケア:【生活とともにある死】などであった。
    考  察
    高齢者の望む終末期ケアは,島の生活文化と死に対する見方を尊重されることであった。島の介護職は高齢者の最期の願いを叶えるために,介護サービス提供者として求められる役割と,島民として伝統的な社会を維持するために求められる役割の双方を発揮することによって,地域における看取りの実現に寄与していた。
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