2024 年 16 巻 1 号 p. 1_2-1_10
本研究の目的は,認知症にやさしいコミュニティ(Dementia-friendly community;以下DFC)の実現を目指す地域密着型介護事業所の利用者である認知症の人々の生活状況から,事業所で過ごす認知症当事者を含む集団が構成する文化を捉え,DFCに認知症当事者が求める要素を理解することである。
本研究は,DFCの実現を目指し介護サービスを提供する地域密着型通所介護事業所において,利用者である認知症の人10名を対象とし,エスノグラフィーの手法に拠る質的記述的研究を行った。調査期間は,2018年6月から2019年7月であった。データは,参与観察(約162時間)およびエスノグラフィックインタビューに拠り収集された。データは,Spradleyの手法を参考にし,段階的研究手順法に拠り分析した。
その結果,DFCに認知症当事者が求める要素として6つのカテゴリーが抽出された。それらのうち,《意思決定の尊重》,《個々の強みを活かした役割の尊重》,《対等な関係性が育む主体性の尊重》,《地域社会との多様な交流》は,先行研究と同じ文脈であった。一方で,《認知症の人同士で創る居場所》,《家族関係のしがらみからの一時的な解放》は,本研究で新しく抽出された要素だった。
本研究の知見は,福祉,医療,地域社会など様々なコミュニティで従事する看護職にとって,認知症の人が有する力や彼らのニーズの理解を促し,認知症ケアや看護実践におけるアセスメント,介入および評価の発展に寄与するものと考えられる。