文化看護学会誌
Online ISSN : 2433-4308
Print ISSN : 1883-8774
原著論文
〔‘住民の価値観・生活・つながり’を大切にする保健指導方法ABC〕研修受講者の文化的能力の発展
丸谷 美紀佐藤 紀子大澤 真奈美宮﨑 美砂子雨宮 有子細谷 紀子
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2016 年 8 巻 1 号 p. 1_2-1_13

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抄録

目  的
 筆者らが開発した〔‘住民の価値観・生活・つながり’を大切にする保健指導方法ABC〕(以下,保健指導方法ABC)は,対象者の生活行動が文化に影響を受けた価値観や規範に導かれていることを明確に意識し,保健指導者の価値観を自覚した上で援助ができること,即ち,保健指導者の文化的能力を発展させることを目指している。本研究では,保健指導方法ABCの研修を実施し,受講者が実践していく過程に見られる,自己の保健指導に関する認識,及び,実践する際の課題を調査し,既存の文化的能力の発展過程と照らし合わせて,受講生の文化的能力の発展を考察する。
方  法
 研究参加者は保健指導方法ABCの研修受講者のうち研究参加への同意が得られた17名だった。研修前の「自己の保健指導技術に関する課題」の記述内容,研修時の「グループワークの逐語録の内容」,研修後の「振り返りシートの記述内容」をデータ源とした。データ源から,研修の進行に沿って,受講者の保健指導に関する認識,及び,保健指導方法ABCを実践する際の課題を質的帰納的に分析した。
結  果
 受講者17名の職種は,保健師が15名と栄養士が2名だった。所属は,行政が9名,健診センターが7名と職域が1名で,保健指導に従事した年数は3年から21年(平均9年)だった。
 受講者の保健指導に関する認識:研修受講前は,医学的知識や保健指導時間を重視していたが,研修の進行と共に,コミュニティの文化や保健指導者の文化に気づき,対象者の文化に即した保健指導を実践したことで意義を実感していた。また,文化を共有するための記録を作成したり,新人へ伝承する意欲を示したり,個別保健指導を通じてコミュニティへ働きかける必要性に気づいた。
 保健指導方法ABCを実践する際の課題:第1回研修直後は,地域を把握したり文化を変えたりしていくこと等に困難感を述べていたが,研修の進行に従い,文化に基点を置いた基礎教育や人生経験の必要性,さらに,コミュニティへの働きかけや制度改善の必要性に言及した。
考  察
 保健指導方法ABCの研修受講により,受講者は総体的に既存の文化的能力の発展過程に沿って,文化的能力を発展させていた。さらに文化を伝承する意欲を喚起し,個別保健指導を通じて健康的なコミュニティの文化を育むことを見据えることができ,文化そのものをケアする視点をも養い得たと推察される。

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