文化看護学会誌
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原著論文
夫と死別した中等度,および重度のアルツハイマー型認知症高齢者の喪の過程
渡邊 章子諏訪 さゆり
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2017 年 9 巻 1 号 p. 1_1-1_9

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抄録

目  的
 中等度,および重度のアルツハイマー型認知症高齢者(以下,認知症高齢者)の家族と専門職の視点を通して,日本の仏式葬送文化の中で認知症高齢者がどのような喪の過程を辿るのかを明らかにし,認知症高齢者の喪の過程への看護支援について示唆を得ること。
方  法
 データ収集は,認知症高齢者の家族と専門職の各々に60分間の半構造化面接をし,認知症高齢者が辿っている喪の様相を抽出し質的内容分析をした。
結  果
 対象者は家族3名,専門職2名であった。面接で語られた内容を喪の過程の時期別,および重症度別に並べ分析した。認知症高齢者の喪の過程では,【死別時-葬儀時】では,死別時や葬儀時には配偶者との死別を認識していたが記銘できなかった。【葬儀時-一周忌】では,配偶者がいると思い行動しており,配偶者を想起できる自宅では配偶者のことを尋ねていたが,自宅以外では尋ねなかった。【一周忌-三回忌】では配偶者と一緒に行っていた家族行事の写真撮影時などに「お父さんもっと長生きすれば一緒にいられたのに」と死別を認識する発言が聞かれた。死別から約2年間は,認知症高齢者に家族が同じ説明を繰り返し行っていた。
考  察
 認知症高齢者の喪の過程では認知症高齢者が葬儀などの儀式に参加するだけでは死別の記銘・保持につながらないことが示唆された。認知症高齢者が現実見当をつけやすくする方法として,認知症高齢者の培ってきた生活習慣などを考慮した説明が重要であることが示唆された。

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