放送研究と調査
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ソーシャルメディア言論分析の方法①
2020 年1月から辞任までの安倍首相に対するTwitter上の投稿分析を事例として
瀧川 裕貴永吉 希久子呂 沢宇下窪 拓也渡辺 誓司中村 美子
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2023 年 73 巻 3 号 p. 70-85

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抄録
今日の社会におけるソーシャルメディアの社会的影響力は大きく、世論の動向を把握する際にソーシャルメディアの影響を考慮することは避けられない。他方で、従来の世論調査による世論の把握に比べて、ソーシャルメディアを用いた言論分析がどのような特徴と課題をもっているかについては検討が必要である。しかし、ソーシャルメディアの言論分析は従来の世論調査とは異なる方法が必要とされる。そこで、本論文では、ソーシャルメディアにおける「世論」に計算社会科学という社会科学の新たな分析方法を適用し、世論調査の結果と比較することで、ソーシャルメディアにおける「世論」の意味について検討する。その際、Twitterにおける安倍首相に関するツイートの分析を例として用いる。具体的には、教師あり機械学習によるセンチメント分析という手法を用いて、大規模なツイートデータから、安倍首相に対する支持と不支持の態度を推定する。機械学習のモデルは、ディープラーニングに基づく事前学習言語モデルBERTの改良モデルの一種であるRoBERTaを使用する。モデルの正解率は85.79%であり、十分な性能を発揮することが示された。 分類結果では、ツイートの8割近くが安倍首相に対するネガティブな態度を表していると分類され、観察期間を通じて不支持が支持を大幅に上回っていた。また、モデルが分類したセンチメントに特徴的な語を分析した結果,人間の目から見ても理解可能であり,分類がある程度妥当なものであることがわかった。このように、Twitterから読み取った安倍首相への支持と不支持の時系列変化と世論調査の内閣支持率の比較を行うと,両者は一致せず大きな乖離が見られることが明らかになった。これらの結果は,Twitter上での意見表明と一般世論との関係を考えるための材料となる。次号では,支持と不支持がどのようなトピックをめぐってなされたのか,トピックモデル分析という手法を用いて詳細に分析し,Twitter分析の有用性と課題について報告したい。
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© 2023 NHK放送文化研究所
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