ツツヤナギモは1935年に記載されたツツイトモとヤナギモの推定雑種である.本雑種は原記載以降の記録が乏しく,消滅の可能性が危惧されていた.ツツヤナギモを含めた狭葉性ヒルムシロ属植物の雑種は親種間の識別形質が少ないため同定が難しい.そこで,愛媛県から80年ぶりに再発見したツツヤナギモの形態的特徴と遺伝的特性を明らかにすることを目的に研究を行った.分子遺伝解析から,全4産地の推定ツツヤナギモはヤナギモを母系親,ツツイトモを父系親とする一方向性の雑種であった.形態的解析から,ツツヤナギモの癒合した托葉はツツイトモより切れ込みが深いがヤナギモのように分離していなかった.ツツヤナギモの花はヤナギモに比べ小型で雌蕊は花被に覆われ,柱頭は歪に変形していた.ツツヤナギモの葉形態と花序はツツイトモと類似し,花序軸の花間が伸長しない点はヤナギモに類似していた.