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フクイカサスゲ(カヤツリグサ科)について
織田 二郎加田 勝敏永益 英敏
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2004 年 4 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

フクイカサスゲ(Carex persistens Ohwi var. watanabei Ohwi)はキンキカサスゲの変種として新日本植物誌(大井次三郎著,北川政夫改訂1983)に発表されたが,この名はラテン語の記載文を欠いており裸名である.私たちはこの植物が分類群として認知できるかどうかを標本庫の標本とフィールドでの調査により検討した.その結果,フクイカサスゲの特徴とされる果胞の剛毛に関しては,剛毛の無いもの('var. persistens'がこれに相当する)から少しあるもの('var. takeuchii'はこれに相当する)を経て密にあるもの('var. watanabei'がこれに相当する)まで,変異は連続的であることがわかった.最も多いものは無毛のもので,キンキカサスゲの全分布誠に広がっていた.果胞に剛毛があるものは近畿地方北部から福井県にかけて集中的に分布するが,その地域には無毛のものも普通に分布している.また,生育地の環境の違いについてもはっきりした違いは見あたらなかった.従って私達は,キンキカサスゲ内に果胞の剛毛によってvar. takeuchiiやvar. watanebeiなどの変種を認めることはできない,との結論を得た.

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© 2004 日本植物分類学会
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