分類
Online ISSN : 2189-7034
Print ISSN : 1346-6852
ISSN-L : 1346-6852
生物系収蔵資料に含まれるDNAに及ぼすヨウ化メチル燻蒸剤の影響
小菅 桂子秋山 弘之田口 信洋
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 4 巻 1 号 p. 17-28

詳細
抄録

ヨウ化メチル剤ならびに臭化メチル・酸化エチレン混合剤にて燻蒸を行った植物・菌類・動物の乾燥標本を用いて,サンプルに含まれるDNAに対して薬剤燻蒸がどのような影響を及ぼすかを調べた.抽出されたDNAの電気泳動像は生物種や組織,抽出方法によって異なるが,燻蒸によって高分子DNA量が減少し,多少なりともDNAの分解と低分子化が認められた.しかし,分子系統解析等で問題となるPCR増幅の効率や増幅断片の塩基配列には燻蒸による影響は認められなかった.臭化メチル・酸化エチレン混合剤に比べ,ヨウ化メチル剤はDNAへの影響がより少なかった.薬剤はDNAだけでなくタンパク質を変性させてその可溶性能を変化させること,同じ材料でも抽出方法の違いによりDNAの分解状態が異なることから判断すると,燻蒸による高分子DNA量の減少は,変性したタンパク質によってDNAの抽出効率が低下した結果と考えられる.

著者関連情報
© 2004 日本植物分類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top