抄録
マツムシソウ科植物は狭義の果実(種子と果皮)を包む萼筒のさらに外周を取り囲む構造をもつ.近年国内の文献では,マツムシソウ科のこの果実構造に対して「小総苞」,「小苞片」等複数の用語が使われてきた.この果実器官の形態比較は本科の分類学的研究において特に重要であることから用語を統一して使用することが望ましいため,最も適した用語の検討を行った.その結果,従来使われてきた和文用語は本科の頭花構造に照らし合わせると形態学的にすべて不適切であると判断したので,ここにマツムシソウ科の萼筒外部を包む果実構造を指す用語として,新たに「被萼」を提唱する.