抄録
絶滅危惧種であるコウホネ属について,保全生態学的な知見を得るために,高知県中央部に生育する個体群の詳細な分布と生育環境に加え,フェノロジーについて調査を行った.調査地とした5ヵ所では51個体が確認され,コウホネとサイコクヒメコウホネ(ヒメコウホネ中間形とサイジョウコウホネ)に分類された.多くの個体のフェノロジーは新葉の展開期が2〜4月,衰退・葉の展開しない時期が8〜翌年3月,花期が4〜10月であった.一方,衰退・葉の展開しない時期が9〜翌年7月まで続く個体が生育する調査区が一つあった.この調査区は,上流で河川改修工事が進行しており,個体群そのものの消失が危惧される.また,本調査区以外においてもコウホネ属植物は人為的影響をうけやすい環境に生育しているため,個体群の動態や生育環境について継続した調査をする必要がある.