植物分類,地理
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タイ国産キク科植物の分類学的研究7
小山 博滋
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1986 年 37 巻 4-6 号 p. 111-116

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抄録

最近中国産サワギク族tribe Senecioneaeの再検討結果がJEFFREY&CHEN(1984)によって発表された。それによると、これまでのサワギク属Senecio(本誌6巻、265〜275項に北村先生の論説がある)はSenecio, Nemosenecio, Tephroseris, Sinosenecio, SynotisとCissapelopsisの6属に細分されている。これらのうち、邦産に関係のある属は前3者である。Nemosenecioはサワギク節Sect. Nemosenecioを属として認めたものである。邦産のサワギクSenecio nikoesisに加えて、中国産として5種記録されている。Tephroserisはオカオグルマ節Sect. Tephroserisを属としてものである。本邦国有のタカネコリウンカS. takedanusとギバナコウリンカS. furuseiや北海道から樺太にかけて分布するミヤマオグルマS. kawakamii,中国大陸にかけて分布するコウリンカ(タカネコウリンギクを含む)S. flammeusサワオグルマS. pierotiiとオカオグルマS. integrifoluis subsp faurieiなどを含むもので、中国にはこの他に10種ある。新しく定義されたSenecioは邦産の残りの5種、タイキンギクS. scandens, キオンS. nemorensis, ハンゴウソウS. cannabifolius, コウリンギクS. argunensisとエゾオグルマS. pseudo-arnicaを含む。尚、中国にはこのSenecioのものとして約60種記録されている。タイ国産のこれまでのSenecio(KERRの目録では7種)はCissampelopsis, Senecio, SinosenecioとSynotisの4属となる。本報告では、Cissampelopsisのみが扱われている。本属は本格的な藤本植物で熱帯アフリカから中国へかけて分布し、約20種あるという。中国では6種記録されており、そのうちの1種がタイ国北部まで、他の1種がタイからマレーシアへ南下している。前者はタイ国産としては新記録となる。ウスベニニガナ属Emiliaに新種を記載した。ウスベニニガナE.sonchifoliaに似ているが、新種は花冠に毛を生ずる点で花冠が無毛のウスベニニガナと区別できる。新種は葉が膜質で冠毛が小花より短かく、そう果の毛がウスベニニガナの倍ほども長いなどの特徴を合わせもち、タイ国の半島部からマレーシアに分布する。

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© 1986 日本植物分類学会
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