植物分類,地理
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キンポウゲ科の分類3
田村 道夫
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1992 年 43 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

シロカネソウ亜科, カラマツソウ亜科, ヒドラスチス亜科は小型の染色体をもつ。基本数は, シロカネソウ亜連ではx=6,イソピルム亜連, オダマキ亜連, カラマツソウ亜科ではx=7,アステロピルム亜連ではx=8,オウレン亜連ではx=9,ヒドラスチス亜科ではx=13である。x=7は多くの属や種にみられ, 一方, x=8とx=13はそれぞれl属1種にみられるだけである。したがって, 小型染色体をもつ群における基本数の変化は, 大型染色体の場合のように連続的でなく, 分化のより古いことが推定される。袋果をつくるシロカネソウ亜科のなかでは, 花弁をもたないチチブシロカネソウ属はもっとも原始的である。この群の花弁は雄蕊の変化したもので, 柄があり, それが短くなり身部が発達する方向に進化すると考えられる。無柄で距の発達した花弁をもつオダマキ属はシロカネソウ連でもっとも進化した群とみなされる。オウレン連では, 盃状の花弁, 単葉, 2n=16の染色体をもつAsteropyrumがもっとも原始的である。オウレン属のバイカオウレン節はこれに近い。オウレン節は1-4回三出ないし羽状三出複葉, 総状花序と単性花への傾向をもち, Xanthorhizaはこれとの類縁が推定される。カラマツソウ属はオセアニアの大部分を除いて世界中に広く分布する。カラマツソウ亜属は旧世界に多いが, ヒメカラマツとアキカラマツは北米の北部や高山帯にもある。T.sparsiflorumはアジア東北部より北米におよんでいる。また, ミャマカラマツ節は東アジアに分布するが, 1種T.clavatumは北米東部にあり, キンポウゲ科では稀なGray型隔離分布の例である。Lecoycrium亜属は花柱と柱頭が長く伸びて特殊化しており, 新世界に多いが, 両性花をつけ, 特殊化の程度の低いMacrogynes節は, ヨーロッパ, アフリカ, 南米に分布する。両性花なつけるか, 両性花と雄花をつけるCamptogastrum節とPelteria節は南米, 中米に, 雌雄異株のHeterogamia節とLeucocoma節は北米に分布する。中国のT.smithiiは, どうみてもHeterogamia節に分類されるが, これは他の種とは独立して, 並行的に由来したと考えられる。

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© 1992 日本植物分類学会
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