1997 年 47 巻 2 号 p. 135-141
五島列島福江島からカンアオイ属の1新種, Asarum mitoanum T. Sugaw. (フクエジマカンアオイ)を記載した.この種は, 上部が強くくびれたがく筒をつくり, その内壁には縦横に隆起したひだが発達し, またがく裂片基部には微突起が多数形成され, 花柱は角状の付属突起をもたないなどの点からミヤコアオイ節(sect. Aschidasarum)のAsarum hexalobum F. Maek. (サンヨウアオイ), 特に平戸島に固有なA. hexalobum F. Maek. var. controversum. Hatus. et Yamahata(シシキカンアオイ)によく類似する.しかし, がく筒が洋なし形あるいは台形状で, 花柱背部ははっきりとした角状の付属突起をもたないにもかかわらず柱頭が頂端からずれた位置につき, また雄しべが6個に半減(花柱と向かい合う外輪の雄しべ6個が完全に退化)し, 子房の位置が半下位であるなどの点で区別できるので別種とみなした.この植物の発見者でもあり, また現地調査の案内をしてくださった水戸源氏氏ならびに水戸惣右エ門氏に心よりお礼申し上げます.