植物分類,地理
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エノキ科とニレ科(イラクサ目)の毛の形態
戸部 博高相 徳志郎
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1997 年 47 巻 2 号 p. 153-168

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抄録

エノキ科とニレ科の葉と子房表皮にある毛の形態を全15属29種について走査型電子顕微鏡を使って調べた。両科とも, 他のイラクサ目の科と同様に, こん棒形(または頭状, 盾型)の多細胞性の腺毛と漸先形の単細胞性の毛を持っている。エノキ科の腺毛の形態は多様であるが, ニレ科のものは常に短いこん棒形である。漸先形の単細胞性の毛の表面はエノキ科(Ampeloceraを除いて)では一般に細かな乳頭状突起を持つが, ニレ科では滑らかである。このように, 毛の形態はエノキ科をニレ科から区別するばかりでなく, (Ampeloceraを除く)エノキ科はニレ科よりもクワ科やイラクサ科などイラクサ目の他の科に似ている。しかし, イラクサ目の外群と推定されている植物群(つまり, マンサク亜綱やビワモドキ亜綱の目)は比較すると, エノキ科とイラクサ目の他の科と共通する毛の形態は原始的形質で, むしろニレ科の毛の形態が派生形質であることが示唆された。エノキ科の類縁についてはまだ分からないが, ニレ科についてはイラクサ目の他の科の群とは離れた進化系列にあるらしいことも示唆された。また, Ampeloceraがエノキ科やニレ科とは異なる点なども議論した。

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© 1997 日本植物分類学会
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