植物分類,地理
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Print ISSN : 0001-6799
ペチュニア属(ナス科)分類群における自家不和合性の分化
塚本 達也安藤 敏夫國分 尚渡辺 均田中 理枝GORO HASHIMOTOEDUARDO MARCHESITEH-HUI KAO
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1999 年 49 巻 2 号 p. 115-133

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抄録

ペチュニアなどナス科植物は配偶体型自家不和合性を示すことで知られる。本報では,自家受粉後の着果率を指標として,既知のペチュニア属全分類群(17分類群)を対象とし,86群落由来の1,201個体の自家(不)和合性を調査した。Petunia axillaris subsp. parodii(前報)に加え,subsp. subandina, P. exserta, P. occidentalisを自家和合,残りの全分類群を自家不和合と判断した。P. reitziiには,自家不和合個体のみで構成される群落に加え,自家不和合個体に自家和合個体が一部混ざる群落が認められたが,これはP. axillaris subsp. axillarisの場合と同様,自家不和合機構の破壊によるものと推定された。自家和合分類群はすべて果柄が内曲し,P. axillaris subsp. axillarisとP. integrifolia subsp. inflataを除く自家不和合分類群は果柄が外曲することから,自家不和合性と系統との関連が議論された。ペチュニアの分布域の年間降水量は,東の大西洋沿岸で多く,アンデス山脈に近い西で少ないが,降水量の少ない地域に自家和合分類群が広く分布することと,東部産ながら自家和合性のP. exsertaの特殊な生育環境から,自家和合性が受粉媒介者の機能しにくい環境下でのオプション機能として発達した可能性が議論された。

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© 1999 日本植物分類学会
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