植物分類,地理
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東亜植物資料14
大井 次三郎
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1936 年 5 巻 3 号 p. 179-188

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抄録

226) マルバシマザクラ 以前に同名がある爲め從來の學名が使用出來ないので改名する, 227) ヒメスヒカヅラ 琉球列島産の葉の小さく厚く,光澤があつて毛茸が少いスヒカヅラの變種であるが此れは中井博士も既に疑つて居られる樣に變種といふよりも獨立したもので,花が小さく,花冠の外面にある腺は殆んど無柄である, 228) ヒメスズムシサウ 琉球列島の宮古島産の極小形のスズムシサウで莖は匍匐する,臺灣産の S. rankanensis HAYATA に酷似して居るが一層圓く,先端も圓い,琉球列島の植物學的開拓に盡力して居られる多和田眞淳氏の採集で,學名は氏にちなんで上記の樣に命名した, 229) フトボナギナタカウジユ 本誌昨年の第四巻232頁に記したから略する, 230) アマミハウチハ 奄美大島産のシマハウチハは琉球のものに比して葉の齒牙が鋭いので變種と考へる, 231) ナガバアリノタウグサ 南支那に知られた本種は,從來本邦には未記録であつたが琉球沖縄島に於て坂口總一郎氏及平芳久氏が採集せれた,本邦での最初の發見である,アリノタウグサに比して葉莖に稍粗澁に近い毛茸があるのと葉巾が狹いのとで一見區別が出來る,尚植物總覧の舊版で臺灣産として居るのは正しくなく,右は多分早田博士の Icones のと同樣支那産のものに基いて居るらしい, 232) タイツリワウギ Astragalus membranaceus BUNGE はシベリア産のもので本邦のタイツリワウギに比して花軸が長く,苞,托葉が細く,花が小く萼に密毛のない別種であつて後者は學名がないので新しく命名する, 233) ハネミノモダマ 琉球産のイルカンダを調べた直後,同じく多和田眞淳氏から園原咲也氏採集の西表島の標本を頂いた,此植物は面白い事に莢の縁邊及表面に著しい多數の翼があり形も巾廣くて短く非常に變つたものである,紅頭嶼の Mucuna membranacea HAYATA の記載に似た所があるがそれでは果實の形が全く知られて居らないので比較のし樣もない上に花の色も明かではない,しかし蕚の上片の形は西表島のものでは著しい,又最近多和田氏から與那國島産のものも頂いた, 234) テフセンエビラフヂ Vicia ramuliflora (MAXIM.) OHWI に似た朝鮮産の植物であるが托葉が細く全縁で脱落し易い別種である, 235) ケタテヤマキンバイ 臺灣の高山に分布するタテヤマキンバイは歐洲及本邦産のものに比して全體が毛深く,花辨が廣倒卵形で少し大き氣味であるから變種と考へる, 236) コゴメカラマツ 九州日向國の尾鈴山のカラマツサウで,ミヤマカラマツに近い樣に思はれるが痩果が小形で約半分位の長さしかなく,その小柄の約半分に近い著しい植物である,宮崎高等農林學校の遠藤茂氏から佐野榮伸氏採集の標本を頂いた, 237) Carex Echinus OHWI 支那四川省の産で歐洲産の Carex flava や本邦にも産するエゾサハスゲの群である,しかし眞に類似した種類は一寸見當ぬ樣である,

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© 1936 日本植物分類学会
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