植物分類,地理
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東亜羊歯植物考察15
田川 基二
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1936 年 5 巻 3 号 p. 189-197

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抄録

132. ウスバオホカグマ(新稱) はオホカグマ Microlepia speluncae MOORE に比し,葉はその質遙かに薄く三角形で兩面共に短い毛で密に被はれ嚢堆もずつと小さい.臺灣のクラール,ライ社,臺東にある.學名を Microlepia mollifolia TAGAWA と云ふ. 133. ウスバイシカグマ(新稱) Microlepia substrigosa TAGAWA はイシカグマ M. strigosa PR. に近縁のもので,臺灣と屋久島とに發見せられた新種.イシカグマに比較すれば葉はもつと大きく,質薄く,殆ど三回羽状に分裂し,嚢堆はあまり邊縁に接近してをらず,根莖上の毛は色が濃い.又分裂の程度の低いものはコウシユンシダ M. obtusiioba HAYATA に似てゐるが,小羽片の裏面にはその脈上に疎に粗毛があつて,密生した短柔毛はなく,葉片は長楕圓状披針形で三角形に近くない.支那の M. pallida CHING も似たものであるが,これは羽片の表面が無毛で包膜は腎臟形であると云ふから別種である. 134. イヌケホシダ(新稱) Dryopteris oblancifolia TAGAWA はケホシダ D. parasitica O. KTZE. に似た種類であるが,鱗片の背面には一樣に微細な剛毛があり,葉身は倒披針形で下部の羽片は段々に短くなり且つ著しく相隔たり,羽片は先端が急に細くなつて往々尾状に尖り,最下上側の裂片は他のものと殆ど等長である.臺灣のウライで著者の發見したもの. 135. クワセウシダ Dryopteris kwashotensis HAYATA は包膜に毛がある外はオホバホシダ D. iaevifrons HAYATA と何の異るところもないから,その變種にして學名を Dryopteris laevifrons HAYATA var. kwashotensis (HAYATA) TAGAWA と改めた. 136. オニホシダ(新稱) Dryopteris sublaevifrons TAGAWA はオホバホシダによく似てゐるが,羽片中肋の表面には粗毛があり,最下一對の細脈のみが連結してゐる.臺灣北部,石垣島,沖縄にある. 137. 北鮮のホソバカライヌワラビ Athyrium subimbricatum NAKAI は北支那や滿洲にあるモウコワラビ A. fallaciosum MILDE と同種である.CHRISTENSEN はイハイヌワラビ A. Faurien MAKINO をもモウコワラビと同種とみてゐるが,これはヘビノネゴザの變種である.

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© 1936 日本植物分類学会
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