抄録
スルホフタレイン系の二塩基酸染料(H2A)はpH6以上でA2-として存在するが,中性付近においてはシンコナアルカロイド(例えばキニーネ,Qn)と水素結合を含む1:2の会合体(A2-·Qn2)を生成する。このpH領域では第四級アンモニウムイオン(R4N+)とのイオン会合性は悪く,検量線の直線領域は狭い。しかし,A2·(R4N+)2会合系に一定量のシンコナアルカロイドを共存させると三元イオン会合体(A2-·Qn·R4N+)が形成された。その吸光度はR4N+の濃度に比例し直線領域は広くなり,バルキーなイオン会合体生成により,抽出性は増大した。また,レッドシフトによる深色効果も観察された。そのイオン会合生成はシンコナアルカロイド及びスルホフタレイン染料の酸解離定数と化学構造のわずかな差に依存することから,それらの特性を比較検討した。