2000 年 49 巻 11 号 p. 835-841
高温高湿環境下でニトリルゴム(NBR)/エポキシ樹脂系接着剤の加速寿命試験を行い,接着剤の劣化について検討した。その結果,接着剤のガラス転移温度(Tg)の低下や透過型電子顕微鏡(TEM)観察下におけるNBRへのオスミウム酸の染色能の低下が認められ,接着剤の劣化はミクロ相分離構造を形成しているNBRの劣化に起因することが判明した。NBRの劣化としては主に酸化反応による炭素-炭素二重結合部の切断であるが,そのほかにニトリル基やNBR中に変性されたアクリル酸とエポキシ基との反応でできたエステル基の減少も確認された。また,NBR中の酸化防止剤が接着剤の硬化を目的とする加熱処理過程で気化してしまうことにより,この劣化は更に加速されていることが分かった。