分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
高温加圧酸分解法によるアルミナ焼結体の分解時間の短縮
上蓑 義則森川 久柘植 明中根 清石塚 紀夫
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2001 年 50 巻 12 号 p. 861-866

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抄録

ファインセラミックス中微量不純物定量法の迅速化を目的に, 高温加圧酸分解法による分解時間の短縮について検討した. 15%黒鉛を混入したPTFE製容器を用いて最高290℃でアルミナの分解を行い, 通常の230℃での分解と比較した. 原料微粉末試料では高温で分解するメリットは認められなかったが, 焼結体試料では290℃で分解すると, 230℃での分解に比べて所要時間を最高で1/7程度にまで短縮できることが分かった. ICP-AESによる不純物定量の結果, 290℃で分解を行った試料では幾つかの元素で定量結果並びに空試験値の上昇が認められたが, Siを除いてあまり問題にはならない程度であった. 290℃分解で得たSiの定量結果は, 空試験値も含めて230℃分解での結果に比べて相当高かった. この原因の少なくともかなりの部分は, PTFE製容器の分解によって生成したフッ化物イオンが石英製トーチを侵したことによると思われる. 290℃で分解を行うと分解容器の損傷が大きいなど幾つかの問題はあるが, 分解時間の短縮による迅速化の効果は大きいことを実証した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2001
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