2004 年 53 巻 12 号 p. 1427-1434
近年,冬季に中国大陸から越境汚染物質が飛来し,日本海側地域の降水の酸性化を起こしている.しかし,飛来物質の量や組成は同じ日本海側でも地域により違いが見られる.そこで,2000年7月から2001年6月まで1年間,日本海側9箇所(福岡市,萩市,米子市,鳥取県気高郡,鯖江市,石川県河北郡,富山市,柏崎市,秋田市)において,1週間降水を採取し,降水の汚染の地域的な違いを調査した.いずれにおいても,10月から2月に降水pHが低下した.また,海塩由来のNa+イオン,Cl-イオンの濃度も冬季に増加した.すべての地点で,3月,4月にnss-Ca2+イオン,nss-SO42-イオン,NO3-イオン,NH4+イオンが増加した.これらの汚染物質の飛来には冬季の季節風と春先のジェット気流が寄与していることが分かった.今回,このデータに主成分分析法を適用し,汚染物質中の主要9イオンのグルーピングを行った.