2004 年 53 巻 12 号 p. 1441-1448
有機ハロゲン化物排出などによる環境汚染が社会問題化している中,オンラインで微量濃度監視(モニタリング)する手法の確立が強く望まれている.その有力な方法のひとつとして,ダイナミックトラップ飛行時間型質量分析(TOFMS)法を適用した結果について報告する.本法はガス直接導入式レーザーイオン化TOFMS技術にイオントラップ濃縮技術を付加した手法である.レーザーイオン化されたイオンを効率的に捕捉する手法として,ダイナミックトラップ法が有用であることを確認した.更なる高感度化のためイオン軌道シミュレーションを実施した.その結果,イオントラップ内に入るイオンを減速させる方法の有効性を確認した.シミュレーションで得た知見を実験にて検証し,ポリクロロビフェニル(PCB)類が計測時間1分でpptVレベルの感度で計測可能を確認した.今後,環境モニタリング手法としての適用性を実証していく予定である.