分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
高速液体クロマトグラフィー用プレカラム誘導体化試薬2-(2,3-ナフタルイミノ)エチルトリフルオロメタンスルフォナートの水溶液中3-ヒドロキシ酪酸定量への応用
中原 理恵稲村 勝志渡邊 彦太田 伸嶋田 健次大和 進
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2004 年 53 巻 3 号 p. 161-165

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抄録
本研究では,2-(2,3-ナフタルイミノ)エチルトリフルオロメタンスルフォナート(NE-OTf)試薬の短鎖カルボン酸分析試薬としての応用発展を目的として,水溶性の3-ヒドロキシ酪酸ナトリウムを用いて,諸条件の検討を行った.3-ヒドロキシ酪酸は糖尿病診断のマーカー物質として用いられる血中及び尿中に存在するケトン体の一つで,臨床化学的な測定意義がある.本試薬は水溶液中の3-ヒドロキシ酪酸をプレカラム誘導体化後,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量する目的で用いられる.このために必要な条件として,誘導体化反応中に添加する溶媒の種類,NE-OTf試薬の濃度,反応時間などとともに,過剰試薬の除去について調べた.水溶液中の3-ヒドロキシ酪酸を,添加溶媒としてのジメチルスルホキシド及び触媒としてのN-エチルジイソプロピルアミンを加えて,過剰のNE-OTfと45℃ の超音波水槽中で,40分間反応させた.この条件下,水溶液中の3-ヒドロキシ酪酸はNE-OTf試薬と定量的に反応した.また,過剰の試薬は分解されて3-ヒドロキシ酪酸誘導体化物のHPLC定量を妨害しなかった.検出波長259 nm,試料注入量10 μlにおける検量線は,0.02 nmolから2.0 nmolの範囲で良好な直線関係を示し,検出限界は2 pmolであった.本研究により,NE-OTf試薬が水溶液中の短鎖カルボン酸である3-ヒドロキシ酪酸のプレカラムHPLC定量に応用できることを明らかにした.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2004
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