分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法による畜産物中のベンズイミダゾール系寄生虫駆虫剤の分析
甲斐 茂美赤星 猛岸 美智子金澤 秀子小林 静子
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 54 巻 9 号 p. 775-782

詳細
抄録

畜水産物に使用される動物用医薬品は,生産性の向上や疾病予防や治療のため使用量が増大し,その残留の可能性が懸念されている.一方,食品の安全性確保のため公布された「ポジティブリスト制」施行に向け,動物用医薬品の一斉分析法の開発が急務となっている.そこで家畜用寄生虫駆除剤として広く使用されているベンズイミダゾール系薬剤について,高感度測定と構造解析能を併せ持つイオントラップ-高速液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計(HPLC/MS/MS)に,固定相にペンタフルオロフェニルプロピル基が導入されたHPLCカラムを用いた分析法を検討した.移動相をアセトニトリル : 0.2% ギ酸(50 : 50)(v/v)とし,ポジティブモードのエレクトロスプレーイオン化(ESI)でmultiple reaction monitoring(MRM)及びenhanced product ion scan(EPI)により測定を行った.オクタデシルシリカ(ODS)カラムとは選択性の異なる分析カラム用いることにより,アイソクラテックな移動相での9種のベンズイミダゾール系薬剤の一斉分析が可能となった.また,イオントラップ-HPLC/MS/MSのEPI分析では定性分析の指標として有効な化合物の構造情報が,MRM分析では高感度測定が得られた.HPLC/MS/MS法の活用は残留動物用医薬品分析の有効な手段となると思われる.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2005
前の記事 次の記事
feedback
Top