2005 年 54 巻 9 号 p. 789-798
汚染防護の観点から,環境水中における汚染物質の動態を把握することは重要である.このような背景から,本研究では新潟県内の河川,湖沼を対象に,これらの水質評価並びに新たな動態評価法を探索することを目的とした.そこで有機体炭素(TOC),化学的酸素要求量(COD),主要イオン濃度,δ18O,pH,電気伝導度,溶存酸素を各採水地点について月1回測定し,結果を解析したところ,以下のことが明らかになった.(1)TOC対CODとの相関関係は他の水系からの混合の度合いを推定する手掛かりとなる.(2)佐潟における環境水では,年間を通じて高濃度の硝酸イオン(NO3-)が検出された.特に湧き水においては,30~60 ppmの高濃度を示す試料も見られた.(3)佐潟において,δ18OとTOCとの間に良好な相関関係が見られた.これは甲殻類のプランクトンに起因していると考えられ,δ18Oは有機物汚染に関する指標にもなりうることが示唆される.(4)湖沼水は年間を通して塩基性であったが,地下水は酸性であった.また,湖沼は酸素が過飽和状態にあることが多いのに対し,地下水は不飽和状態にあることが多い.