分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
ガスクロマトグラフィー/誘導結合プラズマ質量分析法による石油中硫黄の化学形態別分析
田尾 博明中里 哲也赤坂 幹男佐藤 信也
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2007 年 56 巻 5 号 p. 333-347

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抄録

ガスクロマトグラフィー/誘導結合プラズマ質量分析法(GC/ICP-MS)による石油中硫黄化合物の高感度な検出法を開発し,定量への可能性を示した.ICP-MSのバックグラウンド強度に占める酸素分子イオン及び硫黄のコンタミネーションの寄与を明らかにし,酸素分子イオンの干渉はICP出力を高めることにより,また,硫黄のコンタミネーションはインターフェイス材質の選択や,Arガスの精製により大幅に低減した.化学形態別感度及びマトリックス干渉のICP出力依存性を調べ,高出力ほど高感度であり,マトリックス干渉が小さいことを明らかにした.検出限界は約0.6 ng S mL−1,GC注入量(1 μL)とスプリット比を考慮すると,ICP-MSで検出される絶対量としては約0.05 pgとなり,炎光光度法(FPD)やマイクロ波誘導プラズマ発光検出器(MIP-AED)に対して2~3けた,pulsed FPDや化学発光硫黄検出器(SCD)に対しても同等ないしは1けたほど優れていた.本法は化学形態によらず等しい感度が期待されるが,実際にはGCのスプリット注入に伴うディスクリミネーションやGCカラムでの分解のため,高沸点化合物の感度が低くなった.実試料としてナフサ,ガソリン,灯油,軽油に本法を適用した結果,他の検出方法(AED,SCD)より低濃度成分まで検出できることを確認した.一方,炭化水素によるクエンチングがSCDに比べて大きく,この抑制が今後の課題であることが明らかとなった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2007
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