分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
ガスクロマトグラフィー/プラズマガススイッチング-誘導結合プラズマ質量分析法の開発とポリ臭素化ジフェニルエーテル定量への応用
田尾 博明中里 哲也赤坂 幹男Ramaswamy Babu RAJENDRANElouali SOFIA
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 56 巻 8 号 p. 657-667

詳細
抄録

ガスクロマトグラフィー/誘導結合プラズマ質量分析法(GC/ICP-MS)では,試料中の有機溶媒がサンプリングコーンやイオンレンズ上に炭素として付着し,感度が経時的に変動することが大きな問題であった.これを解決するため,酸素透過チューブと切替バルブを用いて任意の時間帯に酸素を導入し,混合ガスプラズマ状態とアルゴンプラズマ状態を高速で切り替える方法(プラズマガススイッチング法と名付ける)を開発した.本法は,酸素による炭素除去とアルゴンプラズマによる高感度分析の両方を可能とし,ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)の定量に応用した場合,本法を使用しない場合と比較して,繰り返し再現性を3倍以上,感度を4倍以上向上させることができた.また,8時間の連続分析での感度ドリフトを5% 以内に抑えることができた.一方,熱に不安定な異性体(octa~deca BDE)に関しては,検出限界,検量線,異性体別感度などに問題点があったが,液相の厚さが薄いキャピラリーカラムを用いることにより,大幅に改善できることを示した.その結果,本法の検出限界は0.014 pg(BDE-154)~0.093 pg(BDE-209)と,これまで最も低い値が得られていたGC/MS(高分解能)と同等ないしは優れた値を得ることができた.また,工業用難燃剤の分析において,メタノールを含む溶液をオンカラム注入法で分析すると高臭素化体のピークが消失する現象を見いだし,その原因がリテンションギャップ用キャピラリーカラムの活性化にあることを明らかにした.また,これを解決するためには溶媒をイソオクタンに転溶する手法が有効であることを示した.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2007
前の記事 次の記事
feedback
Top