2009 年 58 巻 7 号 p. 583-594
コストや操作性,検出時間において優れ,特別な試薬を使用せず電極反応のみを利用する電気化学分析法は,遊離塩素の検出法として魅力ある方法のひとつである.電極反応として,陰極還元反応を直接応用した報告は数多くなされているが,陽極酸化反応に関する報告は非常に少ない.本稿では,遊離塩素の陽極酸化反応に関する基礎と分析法としての可能性について,著者らの最近の研究を中心に述べる.不溶性固体電極を用いレストポテンシャルから正方向に電位掃引を行うと約1.1 V vs. Ag/AgClに再現性を有す酸化波が観測され,ピーク電流と濃度にはよい直線関係が示された.多結晶のPt電極において,低濃度域(約<0.11 mmol dm−3)にてPt表面酸化物の形成反応との競合が確認され,任意に選択した電位における電流値と濃度の間には,およそ<0.028 mmol dm−3の範囲で直線関係が得られた.また,通常測定の妨害とされる酸素発生反応を応用することで,pHによりその形態を変化させる遊離塩素を選択的に検出できることが見いだされた.