抄録
病理研究やナノテクノロジー研究の推進に伴い,特定の生体細胞1個中,あるいは微粒子1個中といった極微少量試料に含まれる元素の定性・定量分析への関心が高まっている.現在,アルゴン誘導結合プラズマ(Argon Inductively Coupled Plasma ; Ar-ICP)を励起イオン源とした分析方法は,主要元素,微量元素分析において広く用いられている.しかし,従来の試料導入法は,プラズマへの試料導入効率が1~2% と低く,細胞や微粒子などの極微少量試料の分析には適していなかった.加えて,Ar-ICPではArより第一イオン化エネルギーの高いハロゲン元素や一部の非金属元素の励起イオン化は困難である.これらの問題点を解決するため,著者らは新たな試料導入法及び励起イオン化源の開発を行ってきた.本稿では,ドロプレット直接導入法,マルチガスを用いたICP源,マイクロプラズマ源の開発及び元素分析への応用について報告する.