2010 年 59 巻 7 号 p. 597-603
2-アミノベンゼンチオール(ABT)及び電子求引基を導入したABT誘導体である4-クロロ-2-アミノベンゼンチオール(4-ClABT),5-クロロ-2-アミノベンゼンチオール(5-ClABT),4-ブロモ-2-アミノベンゼンチオール(4-BrABT)の,界面活性剤ミセル水溶液系におけるPt2+との錯形成反応をその錯体の近赤外光吸収特性から評価した.錯体の近赤外発色反応に対して,酸化剤であるヨウ素を1.0×10−4 M共存させると有効であることが分かった.また,ABTの4位に電子求引基を導入することによって,その白金(II)錯体の近赤外吸収のモル吸光係数εが増大し,吸収極大波長λmaxも長波長側へシフトした.4-BrABT錯体では,λmax=759 nmにおいてε=7.5×104 M−1 cm−1であった.この錯形成反応及び近赤外発色反応は,他のd8遷移金属イオンであるNi2+及びPd2+による妨害をほとんど受けないことから,本配位子群の微量Pt2+の定量試薬としての可能性を見いだした.