分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「水」:総合論文
メソポーラス物質MCM-41中に閉じ込められた低温水の熱挙動,構造とダイナミクス
山口 敏男吉田 亨次伊藤 華苗橘高 茂治高原 周一
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2011 年 60 巻 2 号 p. 115-130

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抄録

種々の細孔径をもつメソポーラス物質MCM-41中に閉じ込めた水の熱挙動,構造,及びダイナミクスを,室温から170 Kにわたり,示差走査熱量測定(DSC),FTIR,X線回折(XD),準弾性中性子散乱(QENS),中性子スピンエコー(NSE)測定により調べた.DSC測定から,細孔径の減少とともに細孔水の凝固点・融解点は減少した.直径20 Åの細孔内では,水は170 Kまで液体として存在する.XD解析から,細孔内では毛管凝縮水の四面体構造はバルクに比べて大きく歪んでおり,細孔径が小さくなるにつれて顕著になることが分かった.QENS測定から,細孔内水の並進拡散運動は細孔径が小さくなるにつれて遅くなり,バルク水の値に比べておよそ半分である.細孔水の回転拡散の緩和時間と並進拡散の滞在時間の温度依存性は,いずれもArrhenius型を示した.NSE測定から,細孔径20 Åの細孔中の水の緩和時間は,220 K以上の温度範囲ではVTF式に従う挙動を示すのに対して,220 K以下ではArrhenius型の挙動を示し,動的クロスオーバーが存在することが明らかになった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2011
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