2012 年 61 巻 6 号 p. 459-467
10000細胞からの大規模リン酸化プロテオーム解析を目指し,計測システムの高感度化を行った.構築したシステムでは,タンパク質の可溶化及び消化を促進させるためにデオキシコール酸及びラウロイルサルコシン酸を用いた.また,分析カラムへの試料注入効率を改善するため,オートサンプラーを用いずカラム充填用ポンプにより直接試料をカラムに注入するシステムを採用した.さらに分析カラムの内径を小さくし,システムの高感度化を図った.その結果,本システムを用いることにより,従来のシステムに比べて回収率を平均で約80倍に増加させることに成功し,HeLa細胞10000個から約1000種類のリン酸化サイトを同定できるようになった.本システムは,これまでリン酸化プロテオーム解析が困難だった組織由来の極微量な試料等にも適用可能であり,さらに培養細胞などタンパク質の量を十分に確保できる試料に対しても効果的であるため,今後幅広い利用が期待される.