抄録
イオンクロマトグラフィー(IC)を用いて,海水中の無機態窒素(亜硝酸イオン,硝酸イオン,アンモニウムイオン)の選択的同時定量を検討した.亜硝酸イオン,硝酸イオンは,分離カラムとしてジラウリルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)を平衡吸着させたシリカ一体モノリス型ODSカラム,溶離液として0.4 M塩化カリウム+5 mMリン酸緩衝液(pH 5.0)を用いて分離された後,海水中に存在する共存イオンの妨害もなく測定波長225 nmで直接検出された.一方,アンモニウムイオンは,ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムと1-ナフトールを用いたインドフェノール法によるポストカラム反応を用いて測定波長710 nmで検出された.海水中に存在する陽イオン(主にマグネシウム,カルシウムイオン)によるアンモニウムイオン測定の妨害を抑えるために,陽イオン交換カラムと添加剤(EDTA)を用いた.こうして,海水中に存在する微量の無機態窒素3成分の直接測定を初めて可能とした.35‰人工海水中での各イオンの検量線は,0~5 mg L−1の範囲で良好な直線性(R2=0.999)を示した.亜硝酸イオン,硝酸イオン,アンモニウムイオンの検出限界値(S/N=3)は,それぞれ0.8 μg L−1,1.8 μg L−1,3.6 μg L−1であった.繰り返し精度(各イオン濃度1.0 mg L−1,n=5)は,0.55% 以下(保持時間),1.80% 以下(ピーク面積),1.75% 以下(ピーク高)であった.本法を海水(港湾水・内湾水)の直接注入による各イオンの同時定量に適用した.その添加回収率は91~107% であった.