分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
表面力測定装置を用いた摩擦物性計測による液体超薄膜の構造評価
山田 真爾
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2013 年 62 巻 2 号 p. 131-141

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抄録

表面力測定装置(surface forces apparatus,SFA)を用いて,雲母表面間に挟まれた液体超薄膜の摩擦特性を評価した.SFAを用いると,摩擦力と同時にせん断中の液体超薄膜の膜厚と真実接触面積を高精度で測定でき,液体超薄膜の(動的)構造を詳細に調べることができる.液体超薄膜はその膜厚が分子数層レベルまで薄くなると,急激に分子運動性を失って固化するが,その機構には多くの議論がある.著者らは,動摩擦力の測定による液体超薄膜の実効粘度の評価,及び液体超薄膜の固化と静摩擦力にかかわる緩和時間の解析から,薄膜化に伴う液体の固化がガラス転移機構に基づくことを明らかにした.また,溶融高分子であるポリジメチルシロキサン超薄膜の摩擦挙動の評価から,分子量の高い溶融高分子において,せん断中に分子鎖が基板表面に平行に配向した層状構造を形成することを見いだした.これらの知見は,摩擦現象の分子レベルでの解明と制御技術の開発に役立つと考えられる.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
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