分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「空」:報文
中国の瀋陽,上海及び福州における大気中多環芳香族炭化水素類の地域間差
唐 寧伊崎 陽彦徳田 貴裕季 若男董 麗君呉 慶周 志俊黄 蓉林 振宇亀田 貴之鳥羽 陽島 正之早川 和一
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2013 年 62 巻 4 号 p. 267-273

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抄録

2010年の冬季及び夏季に中国の東部に位置する瀋陽,上海及び福州で総浮遊粒子状物質をアンダーセン式ローボリウムエアサンプラーを用いて粒径別(<2.1 μm,2.1~7 μm,>7 μm)に捕集した.強い発がん性または内分泌かく乱性を有する9種の多環芳香族炭化水素(PAH)と12種のニトロ多環芳香族炭化水素(NPAH)をそれぞれ高速液体クロマトグラフ(HPLC)蛍光検出法,HPLC化学発光検出法で分析した.その結果,3都市の大気中PAH,NPAH濃度はいずれも冬高夏低の季節変動を呈し,また季節によらず瀋陽で最も高く,福州で最も低いことが分かった.また3都市の大気中PAH,NPAHの80% 以上は呼吸器への沈着率の高い微小粒子画分(<2.1 μm)に存在した.さらに,大気中PAH,NPAHの主要発生源の識別マーカーであるピレンに対する1-ニトロピレン濃度比を3都市で比較した結果,上海,福州及び夏季の瀋陽の大気中PAH,NPAHの主要発生源がディーゼル車であり,冬季の瀋陽はディーゼル車と石炭暖房施設の両方であることが明らかになった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
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