分析化学
Print ISSN : 0525-1931
報文
メンブランフィルターへの固相抽出によるAs(III)及びAs(V)の目視分別分析
舟山 剛史水口 仁志志田 惇一
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 62 巻 8 号 p. 685-691

詳細
抄録
メンブランフィルターへの固相抽出によるヒ素(III)及びヒ素(V)の目視分別分析法を開発した.ヒ素(III)とジベンジルジチオカルバミン酸(DBDTC)の錯体は減圧ろ過によって親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のメンブランフィルターに定量的に捕集された.ヒ素(V)は捕集されずにろ液へと移るが,L-システインを還元剤に用いてヒ素(III)へ還元することで同様の操作でメンブランフィルター(MF)に捕集された.ヒ素(III)錯体を捕集したフィルターに銅(II)水溶液を接触させると,MFは銅(II)錯体への変換によって黄色に着色し,色の濃淡によってヒ素の濃度を目視で分析できることが分かった.試料体積が5 cm3の場合,目視での検出限界は2 μg dm-3であった.また,反射吸収測定では0~20 μg dm-3の範囲で直線の検量線が得られ,検出限界は0.2 μg dm-3であった.遷移金属イオンによる妨害は,あらかじめpH 7.0においてDBDTC錯体を形成させ,この沈殿をろ過分離することで回避された.また,本法を河川水試料へ適用したところ,μg dm-3レベルのヒ素(III)及びヒ素(V)の目視分別分析が可能であった.
著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
前の記事 次の記事
feedback
Top