分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
同位体比質量分析法によるコメの起源トレーサビリティに関する研究
伊永 隆史
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2014 年 63 巻 3 号 p. 233-244

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抄録

多元素の安定同位体比分析から農産物の起源をトレーサビリティ可能にするため総合的に基礎研究した.コメ試料について水素(H),炭素(C),窒素(N),酸素(O)のような軽元素の同位体比を元素分析/同位体比質量分析法により精密に分析し,その結果を図示することにより判別を可能にした.コメ試料は日本及び比較のためアメリカ合衆国,オーストラリア,中国で主に採取された.日本のコメは同位体比で他国との違いを示した.有機肥料または化学肥料の施肥により栽培された国内産コシヒカリの同位体比特性について詳細に検討し,他地域で栽培されたコメ試料と明らかに比較可能なことを見いだした.生育した地域の気候,利用された栄養源や生育水の同位体などに特有の地域的な違いから統計学的に検証された.農産物・食品(果物,米,肉,魚など)の起源判別の信頼性を高めるため,コメ成分を抽出しガスクロマトグラフィー分離と組み合わせアミノ酸・脂肪酸等分子の同位体比を計測した.安定同位体の食物代謝の挙動や動態の解析研究(isotopomics)が進展すれば,新しい同位体科学の樹立が期待される.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2014
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