2014 年 63 巻 5 号 p. 399-403
安定同位体比を正確に測定するためには,適切な標準物質が必要である.しかし,国際原子力機関(IAEA)や米国国立標準技術研究所(NIST)が用意している標準物質の種類や量は限られており,とくに,有機物の安定同位体比(水素・炭素・窒素・酸素・硫黄)を分析するための有機物の標準物質のラインナップは,種類,量,同位体比の値ともに,非常に限られている.そこで著者らは,"Development of Organic H, C, and N Stable Isotope International Standards for NIST and IAEA(新たな国際標準物質を製作し,IAEAとNISTに提供する)"という国際共同プロジェクトに関連して,窒素同位体比分析用の九つのアミノ酸の標準物質を作成した.これらは,自然界のアミノ酸の窒素同位体比の変動範囲を十分にカバーするようにδ15N値が-25~+45‰ にデザインされており,国内外の多くの研究室で実用的かつ共通のワーキングスタンダードとしての使用が期待される.