分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
デジタルバイオデバイス ─網羅的1分子・1細胞解析に向けて─
民谷 栄一
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2015 年 64 巻 6 号 p. 397-411

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抄録

デジタルバイオデバイスは,1分子及び1細胞の計測を基盤として開発されるが,1分子及び1細胞DNAポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うための微小チャンバーアレイがシリコン半導体微細加工技術を用いて作成した.シリコン異方性エッチングを用いて逆ピラミッド構造で内部が親水性,外表面が疎水性の85 pLの容積,集積密度10000 cm-2の微小チャンバーアレイを作成し,PCRヘと適用できた.さらにクロスコンタミなしに微小チャンバー内に所定の種々の分子種や細胞種を導入できるように40 nLの微小チャンバーアレイをシリコン基板を用いて同様に作成し,生物種を検定のための複数種の遺伝子の増幅とマルチ解析可能とした.またRhD遺伝子をチャンバーあたり平均0.4~12分子数,蛍光イメージ検出できた.このように微小チャンバーアレイを用いてデオキシリボ核酸(DNA)の分子数をデジタル的に捉えることに成功した.さらに,ポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂を用いて微小チャンバーアレイを作成し,in vitroタンパク合成チップや生体膜チップも開発した.次にlithographie, galvanoformung, abformung(LIGA)プロセスを用いて量産可能なポリスチレン樹脂を用いたシングル細胞解析のアレイを開発した.20万個のチャンバーが形成され,酸素プラズマ親水化処理により80% 以上の細胞導入率を可能とした.これを用いて免疫B細胞のシングル細胞アレイ化を行い,カルシウムイメージ解析により抗原刺激前後の応答を比較し,高い応答を示した細胞の採取し,これを1細胞ごとに遺伝子増幅,遺伝子シーケンス解析を実現した.さらにマイクロ流体チップの水─オイルのコンパートメントフローによる1細胞解析,遠心回転チップによる1細胞ごとにトラップし,その場での長期培養と活性測定を行った.特に心筋細胞を用いて1細胞ごとの形態変化と拍動解析の同時相関解析を実現した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2015
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