分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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trans–1,2-ビス(2-ピリジル)エチレン含浸フィルターと2,4-ジニトロフェニルヒドラジン含浸シリカカートリッジを用いる大気中オゾンとカルボニル化合物の同時分析
林田 英樹内山 茂久稲葉 洋平欅田 尚樹小倉 裕直
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2017 年 66 巻 10 号 p. 727-734

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抄録

大気中に存在するオゾンとカルボニル化合物を簡易に同時分析する方法を開発した.オゾン捕集用として,trans–1,2-ビス(2-ピリジル)エチレン(trans–1,2-bis (2-pyridyl) ethylene, BPE)を含浸させたグラスファイバーフィルター(BPE_F)を作り,カルボニル化合物捕集用の2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-dinitrophenylhydrazine, DNPH)を含浸させたシリカカートリッジに挿入することでBPE_F-DNPHカートリッジを作製した.大気中のオゾンはBPEと反応しピリジン-2-アルデヒド(PA)を生成する.PAとカルボニル化合物は,共にDNPHと反応しヒドラゾン誘導体になり,高速液体クロマトグラフィーで分析される.BPE_FフィルターにおけるBPE含浸量は,1 mg,フィルターの枚数としては2枚が適切であり,効率よくオゾンとカルボニル化合物を捕集することができた.既存のBPE-DNPHカートリッジ法との比較では良好な相関関係(r=0.991)が得られ,PAの生成率が0.52と算出された.BPE_Fの大きな特徴は汎用性が高いことである.例えば,市販されているDNPHカートリッジにも簡単に装着できる.実際に環境大気を分析した結果,気温や湿度の影響を受けずに安定した捕集,分析を行えることが明らかになった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2017
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