分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「光」:報文
拡散火炎内におけるすす粒子の炭素結晶子変化の解析
林田 和宏三木 耀平
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2017 年 66 巻 5 号 p. 343-350

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抄録

燃料の不完全燃焼により生成するすす粒子について,その生成,成長から酸化に至るまでの火炎内における挙動とすす粒子を構成する炭素結晶子の変化の関係を,レーザー分光法を用いることで非接触に解析した.エチレンを燃料とする同軸噴流拡散火炎を対象に,すす前駆物質である多環芳香族炭化水素(PAHs),すすの主な酸化剤であるOHラジカル及びすす粒子の火炎内における濃度分布をレーザー誘起蛍光法(LIF)とレーザー誘起赤熱発光法(LII)で計測した.さらに,火炎中心軸上の各高さにおけるすす一次粒子径を,時間分解レーザー誘起赤熱発光法(TiRe-LII)により評価するとともに,プローブを用いて火炎内のすす粒子を採取し,その内部構造をレーザーラマン分光法で解析した.その結果,すす粒子を構成する炭素結晶子のサイズは火炎の位置によって変化することが確認された.すす粒子の成長領域では炭素結晶子の増大が見られ,成長したすす粒子がOHラジカルの存在する酸化領域に入ると粒子径は減少するものの,炭素結晶子の増大は継続する.その後,すす粒子がOH濃度の高くなる領域に入ると炭素結晶子の縮小が始まることを明らかにした.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2017
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