分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「膜」: 総合論文
高分子膜のin situ ATR-IR分光とケモメトリックス
森田 成昭
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2018 年 67 巻 4 号 p. 179-186

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抄録

液体と接した状態で高分子膜の赤外スペクトルを測定する手法として,attenuated total reflection infrared(ATR-IR)法とフローセルを組み合わせたin situ ATR-IR法がある.この手法を用いると,高分子膜と接した液体を逐次変化させて赤外スペクトルを測定することができる.このとき,刻々と変化するスペクトル波形をシリーズスペクトルとしてコンピューターに取り込み,得られた大量のデータセットをケモメトリックス解析することで,1本のスペクトルからは得られない,詳細な化学情報を得ることができる.本稿では様々な計算手法のうち,multivariate curve resolution(MCR)とperturbation-correlation moving-window two-dimensional(PCMW2D)相関法を取り上げ,in situ ATR-IR法とケモメトリックスを組み合わせて分析したバイオマテリアルの構造機能相関を紹介する.この手法は,液体と接する様々な材料の分析に応用が可能である.本稿では,抗血栓性に優れたバイオマテリアルである,中性高分子のpoly(2-methoxyethyl acrylate)(PMEA)と,双性イオン性高分子の2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)をベースにしたPMC共重合体の分析結果について紹介する.

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© 2018 The Japan Society for Analytical Chemistry
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