分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「膜」: 報文
民生用レーザー加工機を用いる細胞培養マイクロ流体デバイスの作製
佐々木 直樹林 知美井上 奈菜子大西 真寛
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 67 巻 7 号 p. 379-386

詳細
抄録

細胞培養に用いるマイクロ流体デバイスを安価な装置で簡便に作製する手法を開発した.民生用のCO2レーザー加工機でアクリル板を加工してマイクロ流路の鋳型とした.アクリル板の加工法を検討し,彫刻加工・切断加工のいずれでも鋳型を作製できることを示した.作製した鋳型をポリジメチルシロキサンで型取り,培養皿に貼りつけてデバイスとした.このデバイスの流路内でヒト臍帯静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cells, HUVEC)を培養できること,及び溶液流れ下で細胞が流れ方向に配向することを示した.さらにヒト子宮頸がん由来HeLa細胞との共培養を目的として,マイクロ流路とウェルを多孔膜越しに重ね合わせたデバイスを開発した.このデバイスを用い,HUVECのみであれば流路内にコンフルエントに培養されるが,HeLa細胞と24時間共培養するとHUVECの密度が低下することを見いだした.本研究で開発したデバイス作製法は,微細加工を専門としない研究者にも容易に利用でき,マイクロ流体デバイスの細胞実験への応用,特に腫瘍を標的とする薬剤開発等をさらに推進しうる.

著者関連情報
© 2018 The Japan Society for Analytical Chemistry
次の記事
feedback
Top