分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
電気二重層と反応拡散層の理論に基づく電気分析化学の新展開
北隅 優希
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2018 年 67 巻 7 号 p. 387-395

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抄録

電荷をもつあるいは酸化還元活性を持つ化学種を取り扱う上で電気化学の観点は欠かせない.電極表面の電場や電極反応は上述したような電気化学的に活性な化学種の電極表面における濃度をバルク濃度から変化させる.電極表面の電場の影響を受ける領域は電気二重層,電極反応による化学ポテンシャル勾配の影響を受ける領域は拡散層と呼ばれる.今回,3種の特徴的な電気化学反応場についてモデル化を行った結果について紹介する.まず,微細孔中における電気二重層のモデル化について紹介する.電気二重層の厚みが増すと電気二重層容量が平板電極の容量に近づくことなど,電気二重層の重なり合いが予想された.次いで,電荷をもった酸化還元種の吸着について紹介する.電荷をもった酸化還元種の吸着は電位依存性を持ち,標準酸化還元電位近傍で極大となることが予想された.最後に,微小電極上における酵素電極反応について紹介する.酵素反応が極端に速い場合,定常電流は基質の非線形拡散により決まり,それと釣り合うように酵素反応の起こる領域が変形することが予想された.適切なモデル計算を用いて,電気化学反応場における物質の濃度プロファイルを検討することで電気化学反応の理解と分析への応用が進むと期待される.

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© 2018 The Japan Society for Analytical Chemistry
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