2018 年 67 巻 7 号 p. 405-411
希土類元素の工業利用の増加に伴い,その環境負荷が増える可能性がある.将来,人への希土類元素の移行を推定するためには,土壌から農作物への移行係数(TF=可食部中濃度[mg kg−1-dry]/土壌中濃度[mg kg−1-dry])を求めておくことが有用である.本研究では特に水田土壌から玄米への移行に着目し,希土類元素としてLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,LuについてTFを求めた.日本全国から98地点の水田土壌-玄米試料を収集し,土壌,玄米及び糠の元素濃度測定を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で行った.その結果,土壌から玄米への希土類元素のTFの幾何平均値の範囲は(0.42〜6.9) × 10−4であり大きな差は見られなかった.玄米中においては,軽希土類元素の方が糠に多く分布する傾向があることがわかった.