分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「粒」: 報文
タンパク質結晶成長場及びX線回折実験用試料固定材としてのトラックエッチドメンブランフィルターの利用
山田 洋平鈴田 崇仁岡田 英理子髙栁 俊夫鈴木 良尚村井 啓一郎薮谷 智規
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2019 年 68 巻 9 号 p. 639-646

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抄録

タンパク質結晶成長場及びX線回折実験用試料固定材としてのトラックエッチドメンブランフィルター(TEMF)の適用可能性について検証した.モデルタンパク質としてリゾチームを用い,孔径10 μm及び30 μmのTEMF切片をリゾチームの結晶化溶液に浸漬することで,孔内を充填するように成長した結晶を得た.孔で得られた結晶は,TEMFの孔外(バルク相)では孔径の制約を受けずに成長した.孔で成長した物質がリゾチーム結晶であることを偏光顕微鏡観察,ラマン分光測定により確認した.TEMF上に形成した結晶を溶解させると,バルク相から溶解が始まり,孔内部では溶解が遅延する傾向が観察された.最後に,手製の治具を用いて結晶を含むTEMFをX線回折装置にマウントし,微小サイズ(円形, 直径30 μm)のシンクロトロン放射光を用いて,単一孔内の結晶から回折像を得た.回折像より算出された格子定数はab=78.7 Å,c=37.0 Å,α=β=γ=90.0°で,2.1 Å分解能程度のデータを得ることができた.

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© 2019 The Japan Society for Analytical Chemistry
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