分析化学
Print ISSN : 0525-1931
総合論文
脂質分子膜ナノチューブの分析化学への応用
亀田 直弘
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2019 年 68 巻 9 号 p. 683-697

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抄録

生体・合成脂質分子の集合体(ミセル,二分子膜,ベシクル,リポソームなど)は,サンプルの濃縮・抽出だけでなく,分析試薬やセンサー基材としても広く利用されている.近年,分子構造や集合化条件を最適化することで多種多様な脂質分子からナノチューブの構築が可能となってきた.ナノチューブは,枝分かれのない完全な一次元ナノチャンネル,区別可能な内外表面と膜壁,刺激に応じた形態可変機能を有するなど,前述の集合体とは全く異なる構造特性を持つ.径サイズ及び表面化学構造を精密に制御したナノチューブが,分離・分析の場としてだけでなく,分子認識性ポリマーや金ナノロッドを合成する際の鋳型として機能することを実証した.また,ナノチューブの形態可変やゲルや液晶への階層化を利用した目視によるアミノ酸の定性・キラルセンシング,タンパク質の半定量分析を実現した.分析対象物に応じたナノチューブのテーラーメイド化により,さらなる分析化学への展開が期待できる.

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© 2019 The Japan Society for Analytical Chemistry
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