2020 年 69 巻 12 号 p. 715-722
下水処理プロセスの細菌を分析することはプロセスの安定化や高度化に不可欠である.現在,細菌は16S rRNA遺伝子をターゲットとした分子生物学的手法により分析されているが,分析に時間と労力を要するという問題がある.そこで本研究では,細菌の16S rRNAと特異的に結合する2種類のDNAを設計し,これを用いたペーパー分析チップを開発した.対象は全細菌とし,検出プローブとペーパー分析チップの作製方法を最適化し,設計したDNAとハイブリダイズする塩基配列を持つ合成DNAを検出し,活性汚泥中の全細菌の16S rRNAを検出した.ペーパー分析チップ上の検出ラインをスマートフォンで撮影し,その画像をImageJで解析することで,検出核酸量を定量的に評価した.本技術により活性汚泥から抽出した全細菌の16S rRNAを検出できた.抽出液中の16S rRNA濃度は85 nMであった.設計したDNAのどちらか一方とはハイブリダイズしない核酸は検出されず,高い選択性が証明された.