分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
熱脱着・熱分解 — Direct Analysis in Real Time-MSによるポリフェニレンスルフィドの末端構造解析
中村 清香山根 祥吾佐藤 貴弥木下 一真佐藤 浩昭
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2021 年 70 巻 1.2 号 p. 45-51

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抄録

ポリフェニレンスルフィド(PPS)は,耐熱・耐薬品性及び導電性に優れたエンジニアリングプラスチックである.PPSには複数の合成法があり,その違いが末端構造にあらわれるため,末端構造解析が非常に重要である.しかしPPSは常温で汎用溶媒に不溶であり,その解析は困難であった.最近開発された,熱脱着・熱分解─Direct Analysis in Real Time-MS(DART-MS)とプログラム昇温デバイスを組み合わせた装置を用いれば,試料中に含まれる揮発性オリゴマー成分と高分子量成分がオリゴマー程度に分解された生成物の両方を観測することが可能である.本研究では,この手法をPPSの末端構造解析に適用した.その結果,熱脱着したオリゴマー成分と,主鎖の1回切断により生成するPPSの熱分解オリゴマーが観測された.その中から,Kendrick mass defect(KMD)解析法の支援により,PPS末端にクロロフェニル基を持つ成分が見いだされ,この試料はPhillips法により合成されたことが推測された.また,この成分は工業的に合成された試料からも検出され,実試料に対しても適用可能であった.

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© 2021 The Japan Society for Analytical Chemistry
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