分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「食」: 報文
天然食用色素としての応用に向けた和種薄荷乾燥粉末への温水処理効果
大津 直史後藤 雅貴白川 和哉邱 泰瑛霜鳥 慈岳小針 良仁永田 裕一村田 美樹
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2021 年 70 巻 4.5 号 p. 225-230

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抄録

乾燥和種薄荷の葉身部を粉末化したものをそのまま食品に添加すると,食品は茶褐色へと変色してしまい,薄荷本来の色である緑色にはならない.本研究では,和種薄荷粉末で“緑色”に着色することを目的として,薄荷粉末への温水処理効果について解析した.20〜100℃ の温水に15分以上浸漬すると,薄荷粉末に含まれる水溶性ポリフェノールが溶出した.これにより残存するクロロフィルの色が際立つようになり,食品を薄い緑色に着色できるようになった.さらに緑色の鮮やかさは,ポリフェノール溶出量及びクロロフィル残存量と相関性があった.実際,クロロフィル残存率の増加に伴い緑色の鮮やかさは増大する傾向にあったが,ある一定値を超える範囲では,クロロフィル残存率が高い場合よりポリフェノール溶出量が大きい条件において鮮やかさは大きくなった.またポリフェノールの溶出に伴い和種薄荷粉末が有する抗酸化機能は大幅に低減してしまった.しかるに,和種薄荷粉末独特の匂いや清涼感は十分に残っていた.温水処理した和種薄荷粉末は食用の機能性緑色着色料として十分に応用が可能であり,さらにその性能及び機能は,ポリフェノールやクロロフィルなどの成分分析を組み合わせることで予想できることが示唆された.

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© 2021 The Japan Society for Analytical Chemistry
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